幕張ベイタウン、幕張ベイパークの幕張ベイエリアの情報をお伝えしています

ホンビノス貝を使った濃厚クラムチャウダーを作った株式会社963代表の黒川氏は食で船橋を盛り上げる第一人者だった!

突然ですがクラムチャウダーはお好きですか?そして本当のクラムチャウダーを召し上がったことってありますか?本場アメリカ・シアトルの大会で優勝したクラムチャウダーが船橋で食べられると聞き、お話をうかがいに行ってきました!


株式会社963
船橋市内に3店舗(うち1店舗は会員制)式根島に1店舗(GW・夏季のみ)の飲食店を経営、
ケータリングサービス、イベント事業も手がけている
https://963-group.com/ 

ラーメン963
千葉県船橋市本町2‐27‐20
お酒も飲めて美味しいおつまみも食べられる、そして〆のラーメンまで食べられるラーメン居酒屋。
ホンビノス貝を使ったラーメンが有名。もちろんクラムチャウダーも楽しめます。
地図

アジアンバルMAE963
千葉県船橋市本町1-8-29 FSビル4F
パクチーたっぷりのタイ・ベトナム・シンガポール・中国などのアジアン料理が食べられる創作バル。
アメリカの大会でも優勝をおさめたクラムチャウダーもあります。
地図

▼ホンビノス貝で出汁を取ったラーメン、クラムチャウダーも楽しめる『ラーメン963』

お伺いしたのは、ファクトリーと呼ばれているOEM事業やオンラインショップで販売されているクラムチャウダーやにんじんポタージュを製造している場所。飲食店の厨房のような場所に、高温ガマや製麺機が並ぶ、何とも不思議な空間でした(笑)

最初にお伺いしたいのは、黒川さんの経歴です。というのも、なぜラーメンという形態の飲食店を経営されている方が、クラムチャウダーを作ることになったが謎すぎて(笑

そうですよね(笑)実はサラリーマンから脱サラしてラーメン屋になったんですよ。もともとラーメンが大好きで、30過ぎてラーメンの修業を始めました。

当時働いていたラーメン店の社長に「3年修業させてください」と直談判して、シャポー船橋にあったラーメン横丁内の店舗で店長として働かせて貰ったんです。約4年半働いて独立、船橋で「ラーメン963」を開業しました。

船橋でお店をオープンしたのには訳があるんですか?

船橋って千葉の不夜城なんですよ(笑)土日はもちろん、飲み屋さんも多いので、深夜も人が出歩いている。飲んだ後ってラーメンが食べたくなるでしょ?(笑)居酒屋で飲んだあと、ラーメン屋を探す手間を省きたいな、と思って、お酒もおつまみも楽しめて、〆のラーメンまでオールインワンで食べられるお店を作ったんです。

3年位経って、腕試しがしたい!と思い、人形町に「ラーメン963プラス」をオープンしました。

なぜ人形町にお店を出したんですか?

当時はラーメン専門店が全盛期で、私はラーメンを真剣に作っていたので、都内で勝負したいと思ったんです。人形町は企業も多いのでランチタイムと終電までの時間が勝負時です。食べログ1位を取って地域ナンバーワンになる!という目標がありました。

おかげさまで食べログ1位をとることができて、私のラーメンの腕前は誰にも引けを取らないという自信もついたので(笑)船橋に戻りました。

本当に真剣にラーメンに向き合ってこられたんですね。人形町で食べログNo.1を取る!というように、船橋に戻られて何か目標はあったんですか?

船橋に戻るにあたって、地産地消のラーメン屋にしたいという思いがありました。

たまたま漁港の方と知り合ったのですが、その時の漁師さんたちの悩みがホンビノス貝だったんです。ホンビノス貝はもともとは日本にいない貝で、アメリカからの貿易船のバランスをとるための水に紛れ込んで日本に来たと言われています。アサリやシジミは赤潮や青潮で死んでしまうのですが、ホンビノス貝は生命力が強く死なない。ただ、当時はホンビノス貝に漁業権はついていなかったので、いくら取れても捨てるしかない、という状態だったんです。そのホンビノス貝で何か出来ないか?と考えたのが始まりで、ラーメンの出汁をとることに行きつきました。

実はホンビノス貝を使ってラーメンを作ったのは私が日本で初めてなんです。その後、2014年9月に船橋市がホンビノス貝に漁業権を付けました。

▼船橋漁港で漁獲量の多いホンビノス貝

10年以上前からホンビノス貝を使っていたんですね!あまりなじみのないホンビノス貝ですが、ご苦労とかはありましたか?

ホンビノス貝は貝殻はとても大きいのですが、中身が小さいんですね。成長すると貝殻だけが大きくなって、中身はとても小さいものもいます。それに貝殻が大きくなりすぎて死んでしまうと、貝殻の中が泥だらけになってしまうんです。そのため費用対効果が結構悪くて(笑)あとは、生息地が沼地と砂地の両方あって、見分けないとダメなんです。

なぜ見分けないとダメなんですか?

沼地と砂地だと味に違いが出るんです。

貝は新鮮だから美味しいということではなく、採ったばかりだと生息地の味がするんです。そのため、イケスで2~3日、綺麗な水に入れて浄化させます。そのあと冷蔵庫で1日寝かせて飢餓状態および酸欠状態にして、旨味成分のコハク酸を倍にさせます。その状態になってから出汁を取るので、かなり手間がかかるんです。

手間をかけてこそ、美味しい出汁が取れるんですね。

おかげさまでホンビノス貝の出汁を使ったラーメンは大人気になって、行列も出来るようになりました。他にも酒蒸しも提供しています。

そこからクラムチャウダーへと発展していくんですね?

クラムチャウダーに使っている貝ってなんだかしっていますか?日本ではアサリがメジャーですが、本場アメリカではホンビノス貝を使っています。クラムチャウダーのクラムは二枚貝という意味なので、二枚貝をチャウダーにすると何でもクラムチャウダーなんですけどね(笑)

船橋漁港はホンビノス貝の漁獲量が日本の中でも高く、ホンビノス貝の知名度を上げるために、船橋市が新たな名物としてホンビノス貝を使ったクラムチャウダーの全国大会を2019年に開くことになりました。ラーメン963ではホンビノス貝で出汁をとっていましたし、酒蒸しなどの料理も提供していたので、クラムチャウダーの全国大会に出場しました。おかげさまで1回目、2回目共に優勝することができ、2回目の優勝の副賞として本場アメリカでのクラムチャウダー大会の切符をいただきました。アメリカに渡ってから、いろいろなお店のクラムチャウダーを食べ歩き、本場の味を研究しました。

本場のクラムチャウダーは日本で食べるものより圧倒的に濃厚で味も濃いです。この味に負けないためにどうすれば良いか、アメリカに到着して大会までの1週間、食材の調達、味の調整に時間を費やしました。

▼シアトル到着後本場のクラムチャウダーを研究しまくったという黒川さん

言い方はとても悪いですが「日本のラーメン屋さんがなぜクラムチャウダーの大会に出場してるのか?」と言われませんでしたか?

アメリカの方からしたら「なんで?」ですよね。だから見せ方にも工夫しました。大会が行われたのはシアトルだったんですが、スターバックスコーヒーやAmazon、ボーイング社の本社がある土地柄で、教育レベルや生活レベルが高く、グルメな人たちが集まっている場所でもありました。日本食にも馴染みがあって、日本の出汁文化や旨味という言葉、そしてラーメンを知っている人が多い。そこで「日本のラーメンマスターが作る出汁の効いたクラムチャウダー」としてプロモーションをしました。その結果「革新的なクラムチャウダー部門」で優勝することができました。

本場アメリカでも認められたって凄いですね!

優勝した直後 1回目の緊急事態宣言が出て、飲食店は経営時間の短縮や店舗での飲食ができなくなりました。そこで、真空冷凍のクラムチャウダーを開発して、ネット販売をすることにしました。

▼黒川さんの努力のたまもの!本場シアトルで「革新的なクラムチャウダー部門」で優勝

株式会社963のホームページを拝見したのですが、SDG’sの取り組みについて書かれていました。具体的にどんなことをされているんですか?

私は飲食店を経営しているので、やはりフードロスの取り組みに力をいれています。ホンビノス貝を使うことになったきっかけもそうなんですが、漁業や農業で破棄される物を何とかしたいという思いが強いんです。

例えば船橋ニンジンという芯まで真っ赤でベータカロチンが多い人参があるんですが、割れてしまったり大きさが小さい、大きいなどで商品にならず、作付面積の3分の1程度が廃棄されることになります。これらを正規の値段で売るために、963では人参スープに加工して販売しています。味は商店に並んでいるものと変わらないので、二束三文で売り買いするのは違うと思うんです。農家さんは形が悪くても割れていても、同じ手間暇をかけて育てているんですから。

確かに仰る通りです。たまにネットで規格外の野菜や果物を安く販売しているのを見かけますが、黒川さんとしてはそれではいけないと思われたんですね。

私は誰もが平等に働き、平等に生きる世界の手助けをしたいと思っています。

このファクトリーではクラムチャウダー、人参スープなどの963の商品の他に、OEM事業も請け負っています。障碍者の方たちの就労支援として、商品のパッキング、シール貼りなどの発送業務を担当して貰っています。

他にも温室効果ガスの削減のため、運送で必ず使うガソリンを減らす工夫として地産地消を心がけています。

▼全日本クラムチャウダー選手権二連覇の実力!

お話を聞いていると飲食店のオーナーさんというより、黒川さんは経営者の方という感じがします。

私は家業を専務として手伝っていたのですが、本当に営業で苦労したんです(笑)脱サラしてラーメン屋になったので、経営者の目線で物事を捉えることが得意なのかも知れません。

流通に乗らない野菜もそうですが、出世魚と呼ばれる魚の中には小型の時には安価で売買されるものもいます。それらを使って商品を作り、適正な価格で売買できるようにしたいんですよ。

最後に、今後の展開、を教えてください。

全飲食店を助けたい、というのがあります。コロナで落ちた売り上げを補填するために、そのお店の人気商品をブランド化したり、ネット販売するために技術的な助言も出来るし、技術面でお手伝いすることも出来る。

大手の工場ではたくさんの物を一気に作ることができますが、この小規模のファクトリーだからこそ、お店で食べられる味と遜色なく作れると思っています。

あとは、今、ホンビノス貝の漁獲量が減ってきているので、今提供しているクラムチャウダーと変わらない、それより美味しいクラムチャウダーが作れる貝を探しています。

全飲食店を助けたいというのは大きな夢ですね!ホンビノス貝に変わる貝が見つかって、今以上に美味しいクラムチャウダーの完成を私も楽しみにしています。

取材を終えて

取材に伺う前は、なぜラーメン屋さんがクラムチャウダーを作ることになったんだろう?と不思議に思っていたのですが、実は黒川氏はただのラーメンマスターではなく、農家さん、漁師さん、そして飲食店全体のことを考え、行動に移す「飲食コンサルタント」のような立場の方だと解りました。

最新情報をチェックしよう!